失神

一瞬気が遠のいて、目の前が真っ白になった、でも今は大丈夫。そのような一過性に意識を消失した事例にはどのような対処が必要でしょうか。

失神って?

失神とは、「一過性の意識消失発作の結果、姿勢が保持できなくなり、かつ自然に、また完全に意識の回復がみられること」と定義されています。基本的な病態生理は一過性の脳血流低下であり、意識を賦活する脳幹網様体や脳全体に一時的な血流低下が生じた結果、一過性の意識消失発作をきたします。

失神の種類

起立性低血圧による失神

薬剤性ー降圧剤、血管拡張薬、利尿薬、抗うつ薬、フェノチアジン、アルコール

血管内容量減少ー出血、下痢、嘔吐、脱水

自律神経障害ーパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、糖尿病、アミロイドーシス、脊髄損傷、脳腫瘍随伴症候群

■反射性失神

血管迷走神経反射ー情動ストレス(不安、恐怖、心的外傷、疼痛またはその予測、観血など)長時間の立位または座位保持

状況失神ー咳、くしゃみ、排尿・排便後、食後(固形物の嚥下後)、運動後、その他

頸動脈洞症候群ー頸部廻旋(着替え、車の運転)、頸部圧迫

■心原性失神

不整脈ー頻脈性不整脈(上室性、心室性)、徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロック、ペースメーカー機能不全)

心疾患ー急性心筋梗塞、肥大型心筋症、心タンポナーデ、弁膜症、心臓腫瘤

大血管疾患ー肺塞栓症、急性大動脈解離、肺高血圧症

失神との鑑別疾患

■意識消失をきたすが脳全体の低潅流を伴わない病態

 てんかん発作、低血糖、低酸素血症、低二酸化炭素血症を伴う過換気、薬物中毒

意識消失を伴わない失神に類似した病態

 情動脱力発作、転倒発作、機能性、内頚動脈系の一過性脳虚血発作

失神のアセスメント

①失神前の症状の有無

②どうゆう状況であったか

③けいれんの有無

④呼びかけに応じたか

⑤血圧が触れたか

⑥失神持続時間

⑦顔色

⑧眼球上転の有無

などを観察します。特に心原性を疑わせるのは前駆症状なく突然発症、または動悸後の発症、脈拍触知せずあるいは頻脈、徐脈などです。

失神をきたす疾患と対処法

■起立性低血圧

安静臥床時には血圧は保たれているが、立位へ変換3分以内に収縮期血圧が20㎜Hg以上低下、もしくは収縮期血圧が90㎜Hg未満に低下、または拡張期血圧が10㎜Hg以上低下する場合に起立性低血圧となります。

降圧薬内服、脱水、高齢者などが起こりやすく、内服薬を減薬、脱水の回避、急激な立位の回避、男性ストッキングの着用などが有効です。

■反射性失神

立位時に心臓への静脈還流量が減少し、圧受容体反射により交感神経の緊張と迷走神経反射の抑制が生じます。冷感、気分不良などの前駆症状があることが多いです。前駆症状出現時に仰臥位とする、起立調節運動、脱水・飲酒を避ける、などで対処します。

■徐脈性不整脈

失神を伴う洞不全症候群の場合、ペースメーカーが適応となります。

房室ブロックでは発作性房室ブロック、高度房室ブロック、完全房室ブロックなどで失神を伴うことがあり、ペースメーカー適応になります。

■頻脈性不整脈

心室頻拍、心室細動が失神をきたします。

上室性不整脈の場合は、薬物療法やカテーテルアブレーションを行います。

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